2009年4月23日
みやぎ憲法九条の会世話人会
1 海賊行為は、海上での強盗・拉致・身代金強奪という凶悪犯罪であり、このような犯罪を終息させて船舶航路の安全を確保することは国際的な重要課題である。
2 海賊行為発生の背景には、以下の事情が大きく影響している。91年以降の内戦状況によって、ソマリアは国家としての機能が崩壊し、その下で領海管理がなされず、ソマリア周辺海域における外国船舶による密漁で同海域の漁場が荒らされるなど、ソマリア国を含む周辺国の漁民が漁業を続けることが困難になった。そこで、漁場を失った漁民が生活に困って海賊になる事態が発生したのである。その中で、人質・身代金を強奪するという凶悪犯罪も発生しているが、これにはソマリア国の不安定な政情に乗じたプロフエッショナルな集団(シンジケート)の存在が指摘されている。
いずれにせよ、こうした海賊行為は武力によって終息させることはできないであろう。ソマリア沖では既に10数カ国の軍艦が出動しているが、海賊事件は沈静化せず、むしろ増加傾向にあり、軍事力では解決できないことを示している。
3 海賊事件の対応では、アジア諸国の協力によって成果を挙げた実績がある。かつて東南アジア海域で海賊事件が多発していたが、当時の小泉内閣の提唱で、2004年には、「アジアにおける海賊行為及び船舶に対する武装強盗との戦いに関する地域協力協定」(通称「アジア協定」)が締結された。これによって東南アジアでの海賊事件は急減したのである。その際に注目されたのは、わが国の海上保安庁の取締り能力(警備行動)に対する国際的な高い評価であった。
既に、ソマリア海賊対策でも09年1月に周辺各国の共同によって平和裡の解決に踏み出した矢先であり、また、最近では米国も平和的手段による解決を提唱し始めている。
4 麻生内閣は、わが国領海の海上警備活動を想定している自衛隊法82条の恣意的な解釈によって、自衛艦をソマリア沖に出動させた。次いで「海賊対処法案」制定によって、「国会の事前承認」がないまま「いつでも、どこでも、自衛隊の海外派兵を可能」にし、「武器使用の制限も取り払って事実上無制限な使用を可能」にし、しかも、「他国の船舶の護衛」という「集団的自衛権の行使」をも容認しようとしており、自衛隊の海外派兵恒久法に匹敵する極めて危険なものである。これらは、憲法九条に対する従来の政府見解をも逸脱し、海外における恒常的な戦闘行為の容認につながるものである。
わが国が「再び戦争をする国にならないために結集した」私たちは、決してこれを容認することはできない。
5 わが国がとるべき道は、憲法九条に基づく平和的な解決であり、ソマリア国の暫定政府や近隣諸国をはじめとする国際的な共同行動に積極的に参加することである。具体的には、関係諸国と共に、食糧・医療・衛生・教育等の人道的支援及び海上警備行動の技術・資金への協力を行うことを通じて、海賊行為をもたらす根源そのものをなくすることである。これこそが「憲法九条を生かす」最適な道である。
私たちは、国会が日本国憲法とりわけ九条を頂点とする関連法の理念と規定に沿って
良識ある審議と結論を出すよう、強く求める。
以上