2013年度の9条をめぐる情勢詳細

2013年3月23日 みやぎ憲法九条の会呼びかけ人総会で下記の資料提示しました。
2013年時点での情勢分析です。ご参考ください。

以下の文章は、130323呼びかけ人総会資料「情勢の分析資料」としてワード書類でまとめられたものです。

Ⅰ 総選挙(2012年12月16日)の結果と特徴

(1)今回の選挙によって自民党・日本維新の会・みんなの党は議席数366を得た。民主党の改憲派(推定30名)及び自民党と連立を組む公明党の31を加えると改憲派は427議席となり、衆議院議員総数480名の89%に達する。衆議院での憲法改正発議に必要な3分の2を大きく超えた。(資料1)

(2)自民党の圧勝は政権与党である民主党重大な公約違反に対する国民の怒りによって、前回308議席を今回57議席と激減させる中で起きた。投票率は59.32%で、前回から10%も減った。自民党は比例区では前回比219万票減、小選挙区でも前回比166万票も減少し、得票率も前回の26.7%から27.6%へと僅か約1%上昇したにすぎない。しかし前回の119議席から294議席へと激増した。これは小選挙区制の「4割の得票で8割の議席」という結果が自民党の大勝をもたらしたものである。自民党に流れなかった民主党票は大量の棄権と維新・みんなの党などの「第三極」に流れた。

これによって、国会における憲法改正発議が衆議院では可能になったことは重大な事態である。

私たちは、民意を反映する選挙制度への改善を強く求める。

(3)今回の選挙には、重要な国民的課題が並んでいた。例えば、長期にわたるデフレ・不況からの脱却、大震災からの復旧・復興の遅れ、原発再稼働問題、消費税の増税、社会保障の削減、沖縄の米軍基地、TPP参加、尖閣・竹島等の領土問題など。それだけに国民の選択を複雑にした。

12政党が候補者を乱立させ、数ヶ月の短期間で国民が政策の違いを理解することは困難であった。

(4)安倍内閣に対する「一番力を入れてほしい政策」アンケートでは景気・雇用48%、社会保障20%で憲法改正は3%に過ぎない(12月28日『朝日』)。

国民は景気対策を願って自民党を選び、憲法改正を求めたのではない。

 

Ⅱ 第二次安倍内閣の危険な特徴

1 第二次安倍内閣の発足  

以上の衆議院選挙の結果、12年12月26日、第二次安倍内閣が発足した。同内閣は、第一次内閣(2006年9月26日~2007年9月26日)と一つのものとして掴むことによってその本質が明確になる。同内閣は、今年の7月に予定されている参院選挙では「デフレからの脱却」の経済政策を正面に掲げ、国民の支持を得る対応に出ている。しかし、第二次安倍内閣の本音は「戦後レジーム(体制)からの脱却」である。

(1)第一次安倍内閣(2006年9月26日~2007年9月26日)では、安倍首相は「私の任期中に憲法9条を変える」と宣言し、憲法改正手続法(国民投票法)を制定した。2007年8月の参議院議員選挙では、憲法改正を選挙公約のトップに掲げたが、自民党は惨敗し、改憲への策動は挫折した。この結果は、広範な国民世論の反映であったが、2004年6月に生まれた九条の会が全国に広がり(2005年は1072、2007年10月には6734に拡大)改憲阻止の重要な一翼を担った。

(2)第二次安倍内閣の発足に当り、安倍首相は第183通常国会の施政方針演説で、「数ある課題のうち経済の再生にもっともこだわる」と述べた。しかし同内閣の真のねらいは「戦後レジーム(体制)からの脱却」にある。

 

2 第二次安倍内閣の政策(Ⅰ)

(1)自民党の「憲法改正草案」のポイント 

自民党は、2012年4月27日に「日本国憲法改正草案」を決定した。国民主権・恒久平和主義・基本的人権等、日本国憲法の基本原理を掲げている前文を全面的に書き換え、「天皇を戴く国家」とか、「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」等の文言を新たに加えている。また、「天皇を国の「元首」(1条)としている。

第9条に関しては、「自衛権の発動を妨げるものではない」(9条2項)として、集団的自衛権の容認を定め、自衛隊を「国防軍」(9条の2)とし、国防軍は「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」を「(中略)行うことができる」として、海外での軍事行動を認めている。また、国は「国民と協力して領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない」(9条の3)等、憲法9条を全面的に改変しようとしている。

戦時等の緊急事態の際には、内閣総理大臣は「緊急事態宣言を発することができる」(98条)とし、国会における憲法改正の発議の要件を、3分の2以上から、「過半数」(100条)に、ハードルを下げる。また、基本的人権の本質を定めた憲法97条を全面削除し、かつ、近代立憲主義の系譜を引き継いで、国家権力に携わる者の憲法尊重擁護義務を規定した憲法99条の条文から、「天皇又は摂政」を削除、新たに「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」(102条)を加えることで、立憲主義の根幹に関わる重大な転換が企てられている。

要約すれば明治憲法への回帰を図るものと言わざるを得ないが、同時に改憲はアメリカの強い意向に基づくものである。(資料2)

 

(2)集団的自衛権行使・解釈改憲への動き 

安倍首相は集団的自衛権の行使を公然と打ち出している。しかし、憲法施行後66年間、どの内閣も、「自衛隊は専守防衛であり、わが国が攻撃されてもいないのに他国が受けた攻撃に参戦するという集団的自衛権は、憲法違反であり、行使できない」としてきた。その憲法解釈を変更して、「憲法9条の下でも、集団的自衛権を行使できる」とする意向である。これはアメリカからの強い要請に従ったものである。

自民党は、2012年7月4日に作成した「国家安全保障基本法案の概要と骨子」を発表し(資料3-1)、今回の総選挙の政権公約に掲げている。これは「集団的自衛権の行使」を、立法によって認知するものに他ならない。

第一次安倍内閣において、2006年4月17日に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(略称:安保法制懇)を設置し、集団的自衛権の行使が可能な諸条件の検討を行わせた。だがその報告書が提出される前に安倍内閣は総辞職し、同報告書は福田内閣に提出された(2008年6月24日)。しかし福田内閣、麻生内閣およびその後の民主党政権もれを棚上げにしてきた。

今年2月、第二次安倍内閣は「安保法制懇」を再開した。同報告書に示された4類型(公海における米艦の防護・米国に向かう弾道ミサイルの迎撃・PKOにおける武器使用・PKO参加国に対する後方支援)以外にも範囲を広げて行使できるか、検討の課題としている。

 

(3)憲法第96条の改正を意図

憲法改正は、「両議院の総議員の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で過半数の賛成が必要である」(憲法96条)。これについて、自民党は、改憲草案で国会の発議要件を過半数に緩和するとしている。安倍首相は2013年1月30日の衆院本会議で、平沼赳夫氏(日本維新の会)への答弁で、憲法改正に関し「党派ごとに異なる 意見があるため、まずは多くの党派が主張している96条の改正に取り組む」と明言し、憲法改正の発議要件を緩和する方向で、96条を改定すると表明した。また、国会には、自民党以外の国会議員を含めて、「憲法96条改正議員連盟」がすでに結成されている(2011年6月7日)。日本維新の会とみんなの党も憲法96条の改正に取り組む方針を確認している。96条改正の真の狙いが憲法9条や憲法全体の改定にあることを見抜き、9条改憲への対応と同様の取り組みをしていかなければならない。

また、96条改定発議を行うということは、自民党の改憲草案に見られるように、他の憲法条項も改定発議できる条件が出来ていることである。今年7月の参議院議員選挙の結果次第では、96条以外の条項の発議もあり得る。この点についても十分に留意して運動を進めなければならない。

96条は、「憲法によって為政者の行動を縛る」とい近代立憲主義の立場から、多くの国でも簡単には変えられない硬性憲法とされている。(資料3-2)

 

(4)自衛隊法改悪で海外派兵拡大を意図 

今年1月に起きたアルジェリアでのテロによる人質問題(日本人10名が犠牲)を受けて、海外邦人救出のために陸上行動を可能とするなど「自衛隊法」の改定を行おうとしている。日本がその国の了解を得て、自衛隊を派遣してもそれ自体一つの戦闘行為である。ましてその国の了解を得ないで派遣すれば国家主権の侵害にも当たる。今回の事件で、日本もアルカイダの攻撃目標とされていることが明らかになった。9条を生かした平和的な海外での行動だけが日本人の安全を守る道なのである。

 

(5) 武器輸出三原則の緩和

安倍内閣は、F35国内製造部品の武器輸出三原則(資料4-1)の例外化に関する官房長官(菅義偉)談話(2013年3月1日)を発表し、同原則の例外措置を認めた(資料4-2)。これに対して、3月2日付「朝日新聞」は「武器輸出三原則骨抜き」と報じた。「国際紛争等の助長回避」と言う大原則を「国連憲章の遵守」に変え、しかも実質上日本製部品の管理をアメリカに委ねるとしており、日本はどこに輸出されるかは検討出来ない。F35はイスラエルが購入することになっている。政府は「防衛産業の育成」「日米同盟の強化につながる」とし、防衛産業はこれを歓迎している。かっての「死の商人」への道を再び歩むことが懸念される。

(6)衆議院比例定数削減は、何を意味するか

現在、国会議員が“身を切る必要”を口実にして、衆議院の比例定数の削減を行う準備が行われている。

日本の国会議員数は、人口比にして他の国と比較しても決して多くはない。

現在の選挙制度(小選挙区制)は、種々の民意を切り捨てるものである。比例定数こそが民意を正常に反映させる仕組みである。それを削減することは、選挙制度を現在よりもさらに歪んだ制度にするものであり、民主主義の根幹をさらに否定するものである。

各国の人口10万人当りの国会議員数は、以下のとおり。

アメリカ=0.17人、イギリス=2,42人、ドイツ=0.84人、フランス=1,48人、日本=0.47人。この比較から見ても日本の国会議員数が多すぎるとは言えない(共同通信社『世界年鑑』)。

また、政党助成金が約320億円(議員1人当り4432円)。これは、国民の税金から支給されるもであり、一人一人の国民の立場では、自分が支持していない党や議員に支給されることに対する違和感がある。またそれ以上に、政党が政治活動を行う場合に、政府から助成金を受けるというのは、政党の健全な活動力を殺ぐことになる。その意味で、政党助成金を廃止して、各政党が権力から独立して健全な政党活動を行うよう、各政党が取り組み事こそが、“身を切る”道の証になるのではないか。

(7)外交問題 

安倍首相は、戦時中の慰安婦問題での旧日本軍による強制があったことを認めた「河野談話」(1993年・資料5-1)と、「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」という植民地支配と侵略戦争への反省の意を示した村山談話(1995年・資料5-2)の見直しについて言及している。これに対して、アジアのみならず欧米諸国からも日本の右傾化・軍国主義化を批判し警戒する声が高まっている資料6-1、6-2)

尖閣諸島問題では石原・元東京都知事の「買収発言」、野田政権での「国有化」を契機に中国の「力」の対応が強まっている。日本政府も「力」での対応を示している。この状態は両国にとって不幸な事態を引き起こすことになりかねない。政府は尖閣諸島問題は「解決済み」として中国との交渉を事実上拒否している。しかし実際には、両国の間にある意見の違いを前提にした「話し合い」を行うことが必要である。領土問題は憲法9条を活かした平和外交によって解決すべき問題である。

北朝鮮のミサイル発射、原爆実験で緊張が高まっており、だから「武力増強を」と改憲派を勢いづけている。これは戦争への道を自ら拓くものである。憲法9条の精神で理を尽くして話し合うことこそが唯一・最善の解決策であろう。

 

3 第二次安倍内閣の政策(Ⅱ) 

(1)   今年7月の参議院選挙までは、経済対策が重点

今年の7月21日投票で参議院選挙が予定されている。それまで政府・与党は国民の関心の高い景気・経済問題を前面に立てる構えである。その経済政策では、金融緩和・財政出動・経済成長戦略の「三本の矢」(通称・アベノミクス)を推し進めるとしている。

①金融緩和

政府・日銀は、「日銀は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日銀は、金融政策 の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく」「政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるともに、日本経済再生本部の下、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを具体化し、これを強力に推進する」等五項目を含む「共同声明(2013年1月22日)」を出した。

日銀・政府間の「共同声明(2013年1月22日)」(資料7)によって、紙幣の大増発を計画している。日銀券が増えても企業や家庭は事業の成功や返済の見通しを立たなければ借用しない。家計は将来不安から冷え込んでおり、消費拡大は見通せない。金融緩和は公共事業を担当する大手ゼネコン、輸出産業、不動産資本、ヘッジファンドなどが潤うだけになる危険性がある。

②財政出動 

2013年度予算案を見ると、予算規模は92.6兆円と過去最大規模になった。2013年度の国債発行残高は700兆円を超え、一年間の国家予算額の8倍、GDPの1.6倍に膨れ上がり、地方債も含めると977兆円に達する。

③経済成長戦略

アベノミクスは経済成長戦略が成功し、新しい産業ができないと好回転軌道には乗らないが、実体経済の成長方針が弱い。

政府は、当面の経済再生目標を「物価の上昇年率2%、実質経済成長年率2.5%(名目2.7%)、雇用創出60万人」としている。

しかしこの数値は達成できないと見る経済アナリストが多い。(資料8)

真の景気回復策は、GDPの60%を占める内需の拡大である。そのためには働く人々の賃金を上げ、かつ、安心できる社会保障制度を確立することである。

急速な円安により輸出産業は潤っているが、輸入品は高騰し、消費者の購買力をさらに冷え込ませている。

安倍内閣は緊急経済対策推進のため、「経済財政諮問会議」「日本経済再生本部」を立ち上げた。そのメンバーは竹中平蔵氏をはじめ「貧困と格差」を拡大した小泉内閣当時の新自由主義政策(市場至上主義)論者である。

 

(2)国民生活と「景気浮揚」 ――格差と貧困の連鎖

第二次安倍政権の下で、生活保護費の大幅な削減計画が発表されたが、これは単に生活保護受給者214万人に影響するだけではない。生活保護基準は、「国による国民生活の最小限保障」(ナショナル・ミニマム)であり、これを基準として設定される非課税限度額が引き下げられることで、それと連動している地方税・国民健康保険・介護保険等の負担増や就学援助等の給付削減にも影響する。また、最低賃金は「生活保護に係る施策との整合性に配慮するもの」(最低賃金法9条3項)であり、ひいては賃金水準の低下へと波及するであろう。

安倍首相は、最近の国会における論議で「私も経営者に賃上げをお願いしている」などと答弁している。しかし、1970年代までは労働者の約9割は正規雇用であったが、その後、パート・有期雇用・派遣等の非正規労働者が急増し、今日では労働者全体の3分の1を超えており、女性や若年労働者では、ほぼ過半数を占めている。これらが、ワーキング・プア(働く貧困層)となっているのである。これは、安上がりの労働者を求める企業と、それを助長してきた自民党の歴代政権の規制緩和による労働政策の結果に他ならない。

また、野田内閣当時の民・自・公三党合意による「税と社会保障の一体改革」にもとづいて、「社会保障制度改革推進法」(2012年8月)が制定された。同法は、「安定した財源の確保」「受益と負担の均衡」「持続可能な社会保障」(1条)の名の下で、国の役割を「家族及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じた自立支援に矮小化するものであり(2条1号)、生存権保障及び社会保障制度の理念を定めた憲法25条に反するものである。

憲法9条を変えようとする勢力は、同時に社会保障の切り捨てに向かっていることを見定めなければならない。憲法9条と憲法25条とは、不可分一体の関係なのである。

このような格差と貧困の拡大は、多くの勤労者・消費者に政治の問題を考える余裕を奪っており、その気運に乗じて「決められる政治」の強いリーダーを求める社会状況を醸成している。これは、第一次世界大戦後のドイツでナチスが台頭した社会・政治情勢に類似した危険な状況である。

 

(3)軍事予算の膨張・軍事産業育成

2012年度補正予算の「緊急経済対策」で、防衛省はPAC3等、軍事装備品の新規購入費(約2100億円)を計上した。防衛省の補正予算では過去最大であるが、今回の防衛費拡張は緊急経済対策費に潜りこませたのである。

2013年度の防衛省の予算案は4・75兆円で、2012年度予算額を400億円増やした。11年ぶりの防衛費増額である。財界からは、防衛費増額・武器輸出三原則(資料6)の緩和が求められつづけてきた。武器輸出三原則の緩和を通じて、国内の軍事産業の育成が図られようとしている。

 

(4)教育政策

第一次安倍内閣において、日本国憲法の平和主義実現のため1947年に制定された教育基本法が改悪された。その目的は、教育への国家統制であったが、第二次安倍内閣は、これをさらに推し進めるため「教育再生実行会議」を設置。さまざまな施策が打ち出されようとしている。主たるものは))

①道徳教育の強化

教育再生実行会議は、道徳教育を正式の教科にすることを提言した。(2/26)「教科化」は長く自民党政権のめざすところであったが、内面に踏み込む内容に評価が伴うこと、検定教科書により一定の価値観が押し付けられるなど批判が多く実現出来ずにきた経緯がある。

② 教育委員会制度の見直し

戦前の戦争に突き進んだ教育への反省から、政治の介入を抑制し教育行政の独立性を担保する目的で設けられた現行制度を、首長や国の関与を強化する方向に転換する。

③ 教科書検定制度の見直し

選挙公約に教科書検定基準、プロセスを抜本的に見直す」と明記。教科書を事実上戦時中の国定教科書に近づけることをめざしている。

 

(5)原発政策

安倍内閣は「専門的知見の判断に基いて、原発の再稼働・新設」を容認することを明確にした。これは、電力業界を先頭とする財界とアメリカの要求に沿ったものであり、原子力ムラに依存した原発稼動が進められる危険がある。

国民の大多数の声は「脱原発」である。みやぎ憲法九条の会は脱原発について世話人会で決議をしたが、今後も脱原発に向けて地道な努力を続ける。

 

Ⅲ 9条を守る側の状況

(1)9条に対する国民の意識は情勢に敏感に反応する。近時、尖閣諸島問題、北朝鮮問題などで9条を変える世論の高まりは否定できない。

しかし、昨年12月28日の世論調査では、「憲法9条改定」については『毎日』賛成36%、反対52%、『朝日』、賛成32%、反対53%となっている。尖閣などの問題により改憲志向が増えてはいるが、国民はなお健全に判断している。

こうした世論を信頼し、広く国民に訴え、「国会に改憲の発議をさせない」「国民投票になった場合は有権者の過半数が『NO』の意思表示」を行える世論作りを行う。

(2)全国の九条の会は7500を超え、宮城県内では122となった。しかし、県内を仔細に見れば種々の課題がある。九条の会は平成の合併以前の71市町村の内、半数にも達していない。県内の小学校区は400を超えるが、地域の九条の会100はまだ過少である(分野別が22)。また県内九条の会の賛同者は3万人弱とみられ、県内有権者195万人の1.5%に過ぎない。

(3)全国では、有権者の過半数の賛同署名を集めた九条の会は、北海道・深川市、岩手県・陸前高田市、山形県・三川町、長野県・高森町、長野県・下諏訪町、高知県・土佐清水市、高知県・大月町の7つに及んでいる。これらの先進例にならって、宮城県内でも有権者に「九条の会アピール」への賛同署名を広げる活動を進めており、松島九条の会は、世帯数比では町内の過半数に達している。

(4)私たちは、「日本を再び戦争にする国にしてはならない」とする国民の多数派の立場であることに確信を持ち、九条の会活動の強化に努める。

情勢を深く理解するための参考資料編

 

(資料1)12年12月16日投票衆議院議員選挙当選者数・得票率(毎日新聞12月18日)

 

総獲得議席

小 選 挙 区

 比 例 代 表

議席

議席

議席

議席

得票

得票

議席

議席

得票

得票

自 民

294

61.3

237

79.0

25,643

43.1

57

31.7

16,624

27.7

民 主

57

11.9

27

9.0

13,598

22.8

30

16.7

9,628

16.0

日本維新

54

11.3

14

4.7

6,942

11.6

40

22.2

12,262

20.4

公 明

31

6.5

9

3.0

885

1.5

22

12.2

7,116

11.9

みんな

18

3.8

4

1.3

2,807

4.7

14

7.8

5,245

8.7

未 来

9

1.9

2

0.7

2,992

5.0

7

3.9

3,424

5.7

共 産

8

1.7

0

0.0

4,700

7.9

8

4.4

3,689

6.1

社 民

2

0.4

1

0.3

451

0.8

1

0.6

1,420

2.4

国民新党

1

0.2

1

0.3

117

0.2

0

0.0

70

0.1

新党大地

1

0.2

0

0.0

315

0.5

1

0.6

346

0.6

諸派・無

5

1.0

5

1.7

1,109

1.9

0

0.0

216

0.4

合計

480

100.2

300

100.0

59,559

100.0

180

100.0

60,040

100.0

(得票数単位千、百単位以下切り捨て)

 

(資料2)『アーミテージ第三次報告「日本への提言(9項目)」抜粋(12.8.15)

(2)日本は、海賊対処、ペルシャ湾の船舶交通の保護、シーレーンの保護、さらにイランの核開発プログラムのような地域の平和への脅威に対する多国間での努力に、積極的かつ継続的に関与すべきである。

(5)日本は、インド、オーストラリア、フィリピンや台湾等の民主主義のパートナーとともに、地域フォーラムへの関与を継続すべきである。

(6)新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と、米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で、均等に配分された、相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時(peacetime)、緊張(tension)、危機(crisis)、戦時(war)といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である。

(8)日本は、日米2国間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全にかかる、防衛省の法律に基づく能力の向上を図るべきである。

・日米同盟への提言(11項目)(抜粋)

(2)米国と日本は、天然資源にかかる同盟を結ぶべきである。また、メタンハイドレートや代替エネルギー技術の開発にかかる協力を促進すべきである。

(4)日米同盟は、中国の再興への対応するための能力とポリシーを構築しなければならない。日米同盟は、平和的で繁栄を謳歌している中国からは得るものは多いが、高い経済成長と政治的安定の継続は不確実である。同盟のポリシーと能力は、中国の核心的利益の拡大の可能性や、軌道変更、そして予測し得る幅広い範囲の未来に対し適応できるものであるべきである。

(8)米国と日本は、民間空港の活用、「トモダチ作戦」の教訓検証、そして水陸両用作戦能力の向上により、共同訓練の質的向上を図るべきである。また、米国と日本は、二国間あるいは他の同盟国とともに、グアム、北マリアナ諸島及びオーストラリア等での全面的な訓練機会の作為を追及すべきである。

(9)米国と日本は、将来兵器の共同開発の機会を増やすべきである。短期的には共通の利益や作戦上の要求に沿った特別の計画について考慮すべきである。一方で日米同盟は共同開発にかかる長期的な運用要求を共有すべきである。

 

(資料3-1)「国家安全保障基本法案」の骨子(自民党HP 2012年7月6日付けニュースより)

  • 国連憲章に定められた集団的自衛権の行使を一部可能にする
  • 教育、科学技術、建設、運輸、通信などの分野で安全保障上必要な配慮をする
  • 安全を確保する上で秘密保護のため法律・制度上必要な措置を講じる
  • 安全保障に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、安全保障基本計画を定めねばならない
  • 自衛隊に対する文民統制を確保するため、自衛隊の行動に国会が関与する法律を別途定める
  • 世界全体の核兵器を含む軍縮に努力する
  • 武器及びその技術の輸出入は、国際紛争を助長することがないよう配慮する

 

(資料3―2) 憲法96条の改正問題

憲法改正の国会発議要件を、3分の2以上(憲法96条)から過半数に引き下げることを提唱している安倍首相が、先の衆院選前に「たった3分の1を超える国会議員の反対で、発議できないのはおかしい。そういう(改憲に消極的な)横柄な議員には退場してもらう選挙を行うべきだ」と述べていたことを取り上げて、『河北』の社説(2013.2.23)は、「統治者には拘束が必要だ」「横柄な議員とは誰のことを言うのか、見極めるのは私たち国民である」と、手厳しく批判している。

憲法96条の「3分の2」条項は、国際的に見て、憲法改正の要件としてハードルが高すぎるだろうか。例えば、「アメリカ合衆国憲法」(1788年)の改正(修正)手続は、連邦議会の上・下両院の3分の2による発議と、全州の州議会または州憲法会議の4分の3の承認を要件としており(第5条)、ドイツでも、憲法に当たる「ドイツ共和国基本法」(1949年)の改正は、連邦議会議員の3分の2及び連邦参議院(州代表で構成される上院)の3分の2の同意を要件としている(第79条2項)。また、韓国の第六共和国憲法である「大韓民国憲法」(1987年)では、憲法改正は、国会議員の過半数または大統領の発議で提案されるが、議決には、国会議員の3分の2以上の賛成および国民投票における有権者の過半数の投票と投票者の過半数の賛成を要件としている(第128~130条)。

国の基本を定める憲法が、他の法律並みの過半数ではなく、簡単には改正できない「硬性憲法」となっているのは、国民主権にもとづく近代立憲主義の立場から当然であろう。

その上、多くの国の憲法では、憲法改正の限界についても規定している。

例えば、フランスの「第五共和国憲法」(1958年)は、「政府の共和制形態は、憲法改正の対象とすることができない」(89条5項)と定めており、1789年の人権宣言は今も現行法として扱われている。前掲・「ドイツ連邦共和国基本法」でも、「この基本法の変更によって(中略)、第1条(人間の尊厳の不可侵)及び第20条(民主的で社会的な連邦国家・国民主権・権力分立等)に記録された基本原則に抵触することは、許されない」(79条3項)とされている。また、アメリカでは、1776年の独立宣言・1788年の「アメリカ合衆国憲法」は現行法であり、その後の憲法改正は修正条項として追加されるだけなのである。

(国立国会図書館「諸外国における戦後の憲法改正」『調査と情報』687号・2010年、高橋一之編『新版・世界憲法集』岩波文庫・2007年 参照)

日本国憲法でも、基本原理を規定した条項は、次のようになっている。

① 国民主権については、「人類普遍の原理であり」、「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」(前文)、② 平和主義については、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(9条1項)、③ 基本的人権については、「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」(11条)、「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」(97条)と規定されている。

これらの条項は、先進諸国の憲法と同様、基本原理に反するような憲法改正は、たとえ憲法上の改正手続によっても改正し得ないとされているのであり、自民党の「日本国憲法改正草案」(前掲)は、憲法改正の限界を超えているのではないだろうか。

 

(資料4-1)「武器輸出三原則等」

1.武器輸出三原則(1967.4.21) [佐藤総理(当時)衆院決算委(1967.4.21)答弁で表明]

 武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策をいう。

(1)共産圏諸国向けの場合

(2)国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合

(3)国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

2. 「武器輸出に関する政府統一見解(1976.2.27)

「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない。

(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。

(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。

(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

[三木総理(当時)が衆院予算委(1976.2.27)における答弁において「武器輸出に関する政府統一見解」として表明]

(注)わが国の武器輸出政策として引用する場合、通常、「武器輸出三原則」(上記1.)と「武器輸出に関する政府統一見解」(上記2.)を総称して「武器輸出三原則等」と呼ぶことが多い。

 

(資料4-2)F35国内製造部品の武器輸出三原則の例外化に関する官房長官(菅義偉)談話(20113年3月1日)

1 航空自衛隊の現用戦闘機の減耗を補充し、その近代化を図るための次期戦闘機については、2011年12月20日の安全保障会議において、12年度以降、F35A一機を取得すること一部の完成輸入を除き、国内企業が製造に,参画すること等を決定し、同日の閣議において了解された。F35}は「米国等の9力国によって開発・の最新鋭の戦闘機であり、その計画的な取得は我が国の防衛上不・欠である。政府としては、この安全保障会議決定及び閣議了解に基づき、13年度以降は、F35の機体及び部品(以下「部品等」という)の製造(整備を含む。以下同じ)への国内企業の参画を行った上で、F35Aを取得することとしている。F35の部品等の製造への国内企業の参画は、戦闘機の運用・整備基盤を国内に維持する上で不可欠であり、また、我が国の防衛生産及び技術基盤の維持・育成・高度化に資することから、我が国の防衛に大きく寄与するものである。さらに、部品等の世界的な供給の安定化は米国等に資するほか、国内に設置される整備基盤により米軍に対する支援も可能となるため、日米安全保障体制の効果的な運用にも寄与するものである。

2 F35については、従来我が国が取得した戦闘機と異なり、全てのF35ユーザー国が世界規模で部品等を融通し合う国際的な後方な方式。以下「本システム」という)が採用されている。本システムに参加することにより、必要なときに速やかに部品等の供給を受け、迅速な整備が可能となることから、我が国としてもより適切なコストでF35Aの可動率を維持。向上するため、本システムへの参加が必要である。本システムに参加する場合には、国内企業が製造若しくは保管を行う部品等または国内企業が提供するF35に係る役務が我が国から我が国以外のF35ユーザー国に提供されることが想定されるが、本システムでは、米国政府の一元的な管理の下F35ユーザー国以外への移転が厳しく制限されている。

3 政府は、これまで、武器等の輸出については武器輸出三原則等によって慎重に対処してきたところであるが、上記のとおり、国内企業の参画は我が国の安全保障に大きく資することに鑑み、本シ.ステムの下、国内企業が製造若しくは保管を行うF35の部品等または国内企業が提供するF35に係る役務の提供については、米国政府の一元的な管理の下で、F35ユーザー国以外への移転を厳しく制限すること、及び移転は国連憲章の目的と原則に従うF35ユーザー国に対するもののみに限定されること等により厳格な管理が行われることを前提として、武器輸出三原則等によらないこととする。

なお、政府としては、国連憲章を遵守(じゅんしゅ)するとの平和国家としての基本理念は維持していく考えである。

 

 

(資料5-1)「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」

(外務省)

1993年8月4日

いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めてきたが、今般その結果がまとまったので発表することとした。今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。

なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。

いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。

われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

なお、本間題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。

 

 (資料5-2)村山内閣総理大臣談話「戦後50周年の終戦記念日に」

先の大戦が終わりを告げてから、50年の歳月が流れました。今、あらためて、あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき、万感胸に迫るものがあります。

敗戦後、日本は、あの焼け野原から、幾多の困難を乗りこえて、今日の平和と繁栄を築いてまいりました。このことは私たちの誇りであり、そのために注がれた国民の皆様1人1人の英知とたゆみない努力に、私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで、米国をはじめ、世界の国々から寄せられた支援と協力に対し、あらためて深甚な謝意を表明いたします。また、アジア太平洋近隣諸国、米国、さらには欧州諸国との間に今日のような友好関係を築き上げるに至ったことを、心から喜びたいと思います。

平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。

いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。

わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。

「杖るは信に如くは莫し」と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。1995年年8月15日)

資料6-1)  ニューヨークタイムス社説 (2013.1.2)

アジアの安定のために、日韓関係ほど大事なものは他にあまりない。安倍晋三は今回の任期を、韓国との緊張を炎上させ協力をより難しくする深刻な過ちでスタートさせようとしているようだ。彼は、朝鮮半島や他の地域の女性たちを性奴隷として使ったことを含む、第二次世界大戦中の日本の加害に対する謝罪を書き直そうする動きを見せている。

1993年に日本は、何千、何万、または何十万の(訳者注:原文では thousands となっている。thousands は、「何千」単位から「何十万」単位までをカバーする)アジアとヨーロッパの女性たちを軍の慰安所で強姦し奴隷化したことをようやく認め、このような残虐行為に対して初めての完全な謝罪を行った(訳者注:「河野談話」のこと)。1995年には村山富市首相がもっと広範囲にわたる謝罪を行い、「植民地支配と侵略によって」、日本は「多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を」与えたと認めた。

右翼ナショナリストの安倍氏は、産経新聞のインタビューに応じ、特定はしなかったが「未来志向の談話」によって1995年の謝罪と入れ替えたいと言い、ロイター通信に月曜日に引用された。彼は前安倍政権(2006-2007年)は、戦時中日本軍の性奴隷となった女性たちが実際強制されていたという証拠は全く見つからなかったと言った。しかし先週の記者会見で、菅義偉官房長官は、安倍氏は1995年の謝罪は維持するが、1993年の談話は見直すかもしれないと述べていた。

自民党のリーダーである安倍氏がどのようにこれらの謝罪を修正するのかは明らかになっていないが、彼はこれまで、日本の戦時史を書き換えることを切望していることを全然秘密にはしてこなかった。こういった犯罪を否定し、謝罪を薄めるようなどのような試みも、日本の戦時中の残忍な支配に被害を受けた韓国、そして、中国やフィリピンをも激怒させることであろう。

安倍氏の恥ずべき衝動的行為は、北朝鮮の核兵器プログラム等の諸問題において、地域における大切な協力関係を脅かすものになりかねない。このような修正主義は、歴史を歪曲することよりも、長い経済不況からの回復に集中しなければいけない。

(資料6-2)「世界中に『慰安婦』として知られるようになった人々に賛辞を呈したニューヨーク州の記念碑を記念する決議」(2013年1月19日)

2012年6月16日「慰安婦」制度の犠犠牲者を称賛し、記憶にとどめるため、「慰安帰記念碑」がニューヨーク州ウェストベーにあるアイゼンハワー公園の退役軍人記念広場に設置されており、1930年代から第二次大戦を通じて、日本がアジア・太平洋諸島を植民地および戦時占領した間およそ20万人の若い女性が脅迫されて、強制的な軍による売春行為である「慰安婦」制度に組み入れられており、記念碑は米国内で2番目となるもので、「慰安婦」が耐えた苦痛を象徴し、「慰安婦」制度を通じて犯された人間性に対する罪を思い起こされるものとなっており、歴史上起こった重大事件についての意識を高めるために設置されたニューヨーク州内の歴史的記念碑を表彰することは米ニューヨーク州本議会の慣例であり、国連は世界中で240万人が常に人身売買の犠牲者となっており、その80%が性的奴隷とされていると報告している。よってここに、本議会はその審議に際し、世界中に「慰安婦」として知られるようになった人々に賛辞を呈したニューヨーク州の記念碑を記念するよう決議し、さらに、本決議の写しをしかるべき正式文書として、韓国系米国人広報委員会、カプファーバーグ・ホロコースト資料センター、韓国系米国人市民エンパワーメントに送付するよう決議する。

 

(資料7)政府・日銀の共同声明

「日銀は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日銀は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく」「政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるともに、日本経済再生本部の下、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取り組みを具体化し、これを強力に推進する」

 

(資料8)アベノミクスへの見通しを述べるエコノミスト

第一生命経済研究所の主任エコノミスト:「2%は相当強気。市場では1%もいかないのでは」(1月16日朝日)

BNPパリバ証券河野竜太郎チーフエコノミスト「13年度のGDPを0.6%押し上げるだけで雇用人員は6.4万人」(1月16日朝日)