「安保関連3文書」の閣議決定に抗議し、撤回を強く求める

2022年12月23日

内閣総理大臣 岸田文雄殿

「安保関連3文書」の閣議決定に抗議し、撤回を強く求める

みやぎ憲法九条の会

2022年12月16日、政府は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の「安保関連3文書」を閣議決定した。これは、国外での武力行使の禁止,専守防衛など、戦後日本の国是を根幹から転換するものであり、憲法九条を守り生かす運動を推進してきた本会の立場からして、断じて容認できない。

  1. 『我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等の攻撃が行われた場合、武力行使の3要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限の自衛の措置として、相手の領域で、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力、とする「反撃能力」の保有』が明記された。歴代の政府は、「平生から他国を攻撃するような兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」などと、敵基地攻撃の保有は違憲との見解を示してきた。「安全保障環境が変わった」というだけで保有を認めることは、これまでの政府見解との整合性を無視した立憲主義に著しく悖るものである。
  2. 憲法九条に基づく「専守防衛」との整合性を図るために、「反撃能力」を「ミサイル防衛網により飛来するミサイルを防ぎつつ反撃能力により相手からの更なる武力攻撃を防ぐ、ミサイル防衛の補完」と位置付けている。しかし現在のミサイル防衛網では周辺国の向上したミサイル攻撃に対処することは困難であり、「撃たれる前に敵の基地を叩く」敵基地攻撃が主軸になることが明白である。
  3. 上記定義に明記された「我が国に対する武力攻撃が発生」とは、「被害の発生」を意味するものではない。「武力攻撃が発生した場合とは、武力攻撃に着手したときである」との政府見解が出されている(1999年3月 参院外交防衛委員会)。我が国が武力攻撃を受けていなくても、相手国が「攻撃に着手」したと判断すれば「反撃能力」を行使するということである。しかし何をもって「着手」と判断することは非常に困難である。万一判断を早まれば、先制攻撃として国際法違反に問われる恐れが極めて大きいばかりでなく、相手国から反撃を受けることは必至である。戦争を呼び込むことになりかねない。
  4. 上記定義に明記された「武力行使の3要件」の一つが「日本への武力攻撃が発生、または日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされるなどの事態で自衛隊は武力行使できる」とするものである。これにより、『安保法制に基づき集団的自衛権を行使する「存立危機事態」での「反撃能力」行使も可能』と解釈することができる。さらに、「侵攻が起きた場合、日米共同対処により阻止する」と明記されている。日本への攻撃の意思が示されていなくとも、他国が同盟国への攻撃に「着手」すれば、日本の反撃(国外での武力行使)が可能となる。ここまでくれば、国外での武力行使を禁止した憲法九条は完全に空洞化される。
  5. 「防衛力の抜本的強化として、2027年度防衛関連予算が現在のGDPの2%に達するよう所要の措置」が明記された。この目標額は現行防衛予算の2倍近くの11兆円前後にも達する極めて大規模なものである。このような世界第3位にも達せんとする超高額な防衛費の保有は、憲法九条の定める「戦力不保持」の域をはるかに越えるものであり、断じて容認できない。
  6. 「防衛力整備計画」では、「2023年度から2027年度の5年間における本計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金額は43兆円程度とする」「財源の確保については、歳出改革、決算剰余金の活用、防衛力強化資金の創設、税制措置等、歳出・歳入両面において所要の措置を講ずる」と明記された。「税制措置等」には「防衛施設整備のための建設国債の発行」は明示されていないが、「与党税制改革大綱」には「法人税、所得税、たばこ税などを軸とした増税」が明記された。「歳出・歳入両面における所要の措置」により、社会保障費の削減や子育て・教育支援の後退など、国民の暮らしへの甚大な悪影響が危惧される。「復興特別所得税率2.1%を1.1%に引き下げ、残りの1%を防衛費に充てる目的税を新設」とする「与党税制改革大綱」の決定に対し、東日本大震災被災地の住民として、満腔の怒りを持って抗議する。

上記した安保諸政策は、中国、北朝鮮、ロシアなどの周辺国に対する「安全保障上の強い懸念」などに基づいて導かれている。日本が防衛力強化で構えれば、相手国もその強化を更に加速する「安全保障のジレンマ」が生じ、地域の平和と安定が脅かされることになる。

安保政策には平和外交推進の視点が必要不可欠である。

さらに、米軍と自衛隊との軍備(装備)の一体化や共同作戦の強化、米軍基地機能の改変などを押し進める日米両国の関係を抜本的に改める必要がある。

戦後日本の防衛政策の大転換を明記した「安保関連3文書」の改定が国会での議論や国民への説明が無いままに閣議決定されたことは、「集団的自衛権行使容認」の閣議決定(2014年7月)にも匹敵する立憲主義の破壊と言える。

私たちは「安保関連3文書」の閣議決定に抗議し、撤回を強く求めるものである。

以上

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