安倍政権の終わりと改憲問題の新たな局面を迎えて

2020.09.23 九条の会

7年8ヶ月に及ぶ安倍晋三内閣が総辞職し、菅義偉政権が誕生しました。安倍首相が任期を残して辞任に追い込まれた最大の要因は、九条の会も参加した「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」による3000万人署名、発議阻止の緊急署名の運動をはじめとする全国の市民の粘り強い行動が強い後押しとなり、それに励まされた立憲野党の頑張りが、安倍首相の念願である明文改憲の策動を押しとどめ、「2020年末までに」「自分の任期中に」という首相の公約を事実上挫折に追い込んだことにあります。それに加えて、安倍政権が進めてきた大企業を優遇し、いのちと暮らしをないがしろにする政治が、新型コロナの流行に直面して、対策の無力、社会の困難を露呈させたことや、モリカケ、桜を見る会の問題、検察庁法「改正」の企みなどの政治の私物化への怒りの爆発が、政権を追い詰めた要因となりました。

しかし、安倍政権の追求した改憲、大企業優遇の政治は決して安倍個人の思いつきではなく、冷戦終焉以降、自衛隊をアメリカの戦争に加担させようと圧力をかけてきたアメリカや財界、右派勢力の要請に基づくものです。2015年の日米ガイドラインでは日米同盟をアジア・太平洋から世界へ、さらには宇宙にまで拡大し共同作戦体制を強化することが謳われています。安倍首相が辞任したからといってこれらの危険がなくなるわけではありません。

誕生した菅政権は、「安倍政権の政治の継承」を掲げ「憲法改正にしっかりと取り組む」と安倍改憲の完遂を公約に掲げています。菅首相をはじめとして新閣僚21人中実に18人が日本会議国会議員懇談会等の改憲右派団体のメンバーであることはその決意の強さを裏づけています。

さらに、菅政権は、明文改憲の前段として、9条の実質的破壊を推し進める「敵基地攻撃能力」の保持をまず強行しようとしています。安倍首相は、退陣直前の9月11日に異例の「談話」を発表して次期政権に、その実行を迫りました。それに呼応して、安倍首相の実弟である岸信夫新防衛大臣は就任直後の記者会見で、敵基地攻撃能力を含むミサイル防衛について「今年末までにあるべき方策を示し、速やかに実行に移す」と明言しました。これは、自衛隊が米軍とともに海外で戦争する軍隊になることをめざすものであり、9条を破壊する許すことのできない暴挙にほかなりません。

安倍政権を終わらせたことで改憲の企てに大きな打撃を与え、改憲問題は新たな局面に入りました。むろん自民党・改憲勢力はあきらめていません。改めて改憲4項目を掲げ、改憲に拍車をかけようとしています。安倍改憲の強行を阻んだ市民の力に確信を持って、改憲発議阻止の緊急署名に、改めて取り組みましょう。敵基地攻撃力保持という9条の破壊を許さない、という声を挙げましょう。