「いまを思う」歴史のねつ造ということ

吉田 正志(みやぎ憲法九条の会世話人)

最近必要に迫られて、仙台市刊行の『仙台市史』通史編1~9を通読している。このうち通史編1・原始は1999年に上梓されたが、その後2005年に「通史編1・原始 旧石器時代〔改訂版〕」と題された145頁の別冊が刊行された。

それは、2000年11月5日の毎日新聞が、藤村新一東北旧石器文化研究所副理事長(当時)によって2ヶ所の遺跡で旧石器発掘のねつ造が行われたことを報じたことをきっかけに、その後の関係遺跡の検証作業が行われ、9都道県で計166ヶ所が学術資料として扱うことが不可能となったため、その結果を踏まえた叙述が必要になったからである。

この事件は考古学界のみならず、社会全体にも大きな衝撃を与え、ことにねつ造者が地元の人物だっただけに、宮城県でも大きな話題となった。記憶している方も多かろう。

さて本題である。2016年に大阪の国有地が学校法人森友学園に売却された際、ごみ撤去費用等を名目に大幅な値引きが行われた事件につき、その後財務省の関係決裁文書が改ざんされていたことが明らかとなった。この改ざんは、同学園と密接な関係をもっていた安倍晋三首相の妻昭恵氏らの名前を削除などしたもので、当時の佐川宣寿財務省理財局長の指示のもとに行われた疑いがある。

この指示を受けた近畿財務局職員の赤木俊夫氏は、強く抵抗したものの最終的にはこの公文書改ざんを行わざるを得なくなり、ためにその後うつ病を発し、ついには2018年に自死するに至った。赤木俊夫氏の妻雅子さんは、この改ざんの真相を知りたいとして、2020年3月18日に国と佐川元理財局長を相手取り、大阪地裁に損害賠償請求訴訟を起こした。

公文書の改ざんは立派な歴史のねつ造である。現在及び将来の国民に誤った歴史を伝えるものである。しかも真面目な公務員の自死という痛ましい結果さえもたらしている。安倍晋三夫妻や佐川氏はこれらの事実に心が痛まないのだろうか。

(2020年12月5日記)