争いがない、平和な社会を目指して

~争いがない、平和な社会を目指して~

高橋 千佳(みやぎ憲法九条の会 世話人)

穏やかで平和な社会は人類共通の願いなのに、世界では紛争が絶えません。戦争によって尊い命が奪われ、環境を破壊し続けている現状があります。 安保関連3文書、緊急事態条項など政府が打ち出す戦争へ続く道の法改悪に危機感が高まります。「自分たちからは攻めない国」として憲法九条を柱に諸外国に安心を与え、国際社会で培ってきた日本の位置づけを揺るがす大きな転換です。

ウクライナ戦争、北朝鮮のミサイル実験など不安はありますが、あたかも台湾有事が今すぐにも起きるかのように煽る構図が出来ていることは危険です。台湾の約80%の国民世論は現状維持を望んでいます。ところが、台湾有事を口実に、沖縄・南西諸島の軍事化は急ピッチで進んでおり中期防衛力整備計画のもと、自衛隊の配備・増強が進められ、南西諸島には、弾薬庫、ミサイル基地等が作られています。残念ながら沖縄の人々の命と暮らしを守るという一番大切なことが置き去りになっています。沖縄は昨年、本土復帰 50 年を迎えました。かつて 4人に 1人が犠牲になられた沖縄戦を忘れない、繰り返さないことは必然です。沖縄を守るための基地だったはずだったのに、軍備を強化することにより、戦場にしてしまうリスクが高まります。この現状は日本全土の問題だという事を忘れてはなりません。

私が小学生の頃、家には「はだしのゲン」の漫画が置いてあり、兄と弟の3人で、ボロボロになるまで読んだ記憶があります。今は亡き父に「はだしのゲン」の映画に連れて行ってもらい、戦争の悲劇、理不尽な社会であってはならないと映画を通じて教えられました。子どもながらに、正しいことを言っていたゲンのお父さんが戦争の犠牲になったことは納得いきませんでした。また、母が教員になった理由は、教師だった父親が戦争に連れていかれ、硫黄島玉砕で亡くなったからだと聞きました。私のお祖父さんにあたる人です。母は「親父さんの意志を継ぎたい」という思いで教職を全うしたと言います。世代を超えて戦争の悲劇を語り継ぐ機会が薄れていく中、教育現場では「はだしのゲン」を置かなくなったと聞いた時、残念としか言いようのない虚しさを感じました。

気が付いたら戦争が始まっていたのでは遅いのです。無関心でいることは本当に危険です。

争いがない、平和な社会を目指すために、今こそ、憲法前文、憲法九条を盾にし、矛を持たず、平和外交で国を守るべきだと思います。

 

「やむを得ない」? — 有事の市民の命

「やむを得ない」? — 有事の市民の命

小幡佳緒里(弁護士・みやぎ憲法九条の会 世話人)

岸田首相が衆院補欠選挙応援のために訪れた演説会場に筒状の爆発物が投げ込まれる事件が起こった。演説会場で要人が狙われるなどという事件があってはならないことは言うまでもない。

これに関連し、投げ込まれた筒状の物体を多くの聴衆がいる方向へ蹴って首相から遠ざけるなどしたSPの行動に、首相が無事であれば市民が犠牲になっても良いのか、 などの批判の声が寄せられた。

確かに、要人警護の観点からは、爆発物と思われる物体を要人から遠ざけたSPの行動は、その先に多くの市民がいたとしても、やむを得ないものとされ、上記批判はあたらないこととなろう。

しかし、私は、この「やむを得ない」とされることこそが、有事の際の政府と市民との関係を如実に表しているものだと改めて感じた。

憲法は、すべて国民は法の下に平等である、としている。人は平等であり、社会的身分等により差別されることはない。しかし、それは有事の際には当てはまらない。国家を守るということは、国の統治機構、その中枢にある政府を守ることに他ならない。国民(市民)ではなく、政府を守ることが最優先となる。そのため、ミサイルが政府(その構成員)に着弾するのを阻止するためであれば、多数の市民が集う場所へ着弾先を向けることは正当な被害回避行動となろう。有事の際には、市民の命は、国の統治機構に劣後する。

日本は、戦争をしない国になって80年になろうとしている。まさに、戦争がないことが当たり前の日常である。そこでは、人は、命は、平等であるのが前提となっている。

戦争のない日常に生きている私たちは、有事の際、自分の命が国の統治機構に劣後することを理解しているだろうか。

人の命は平等で、社会的地位等によって選別されて良いわけがない。

だからこそ、私は、戦争が起こることがあってはならないと心から思う。

 

9条実質改憲としての安保三文書改訂 戦争させないためのQ&A

「9条実質改憲としての安保三文書改訂 戦争させないためのQ&A」について

改憲問題対策法律家6団体連絡会は、2014年7月の第2次安倍政権による集団的自衛権行使一部容認の閣議決定を受けて結成され、改憲問題について発信を続けている法律家団体の連絡会です。

岸田政権は、今年末に安保三文書(国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画)の改定により実質改憲の総仕上げを行おうとしています。その先には憲法9条の明文改憲も射程に入れられています。安保三文書改訂の目指すところは、日本が憲法9条との整合性から長きにわたり安全保障政策の基本としてきた専守防衛を名実ともに捨て去り、憲法9条を政策面から改憲するものにほかなりません。台湾海峡・南シナ海をめぐって米中の緊張関係が高まる中で、安保法制に加えて、安保三文書改訂が行われれば、日本が戦争に巻き込まれる危険性が飛躍的に高まることとなります。
他方で、ロシアのウクライナ侵略、中国の軍事力増強と覇権主義的行動、朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」と表記)のミサイル発射などの情勢を受けて、日本も軍事力を増強すべき、敵基地攻撃能力を保有すべき9条は無力などの声も聞こえてくる現状があります。

改憲問題対策法律6団体連絡会では、これらの情勢を受けて緊急に「9条実質改憲としての安保三文書改訂―戦争させないためのQ&A」を発行することと致しました。
安保三文書改訂が私たちの安全にどうかかわるのか、軍事力と軍事同盟に拠らないで日本(市民)の安全を守ることができるのかといった疑問に答えます。ご活用下さい。

安保三文書改訂Q&Aのサムネイル

平和構想提言会議 提言発表

――「国家安全保障戦略」に対置する「平和構想」提言を発表――

日本政府は、12月16日にも「国家安全保障戦略」など安全保障関連の3文書改定を閣議決定する方針です。反撃能力という名の敵基地攻撃能力の保有、防衛費の大幅増、武器輸出の拡大といった政策が含まれているとみられ、既に、そうした政策転換を既定路線として、巡航ミサイル購入などの動きが進んでいます。

これらは、日本国憲法の平和主義の原則を逸脱し、周辺諸国との信頼関係を悪化させ、軍拡競争を助長するきわめて危険な政策です。ウクライナにおける戦争や緊迫する東アジア情勢の中での人々の危機意識に乗じて、いたずらに軍拡に傾斜していくことは、日本とアジアの平和にとって取り返しのつかない事態をもたらす可能性があります。

さらに、これらは戦後日本の防衛・安全保障政策を根本的に大転換させるものであるにもかかわらず、国会での審議はほとんどなされていません。一部「有識者」の報告書に基づき、民主的政治過程を経ないまま閣議決定されるという手法は、重大な問題をはらんでいます。

今本当に必要なのは、日本国憲法の平和主義の原則に基づき、軍拡ではなく軍縮を進めることであり、緊張緩和と信頼醸成のための平和外交を展開することです。そうすることで持続的で安定的な国際関係を構築しない限り、本当の平和も安全保障も実現しません。軍拡のための「戦略」ではなく、平和のための「構想」こそが求められています。

こうした中、今年10月、研究者、ジャーナリスト、NGO活動者らが「平和構想提言会議」を発足させました。15名のメンバーによるこの会議は、政府による「国家安全保障戦略」に対置する「平和構想」を提言すべく議論を重ねてきました。

このたびその「平和構想」提言がまとまり、12月15日(木)に公開会議の形で発表しました。

以下の画像をクリックするとPDFファイルを閲覧できます。

20221214_平和構想会議提言文書のサムネイル