2021.05.03 九条の会
戦争への痛切な反省の上にたって1946年11月に公布された日本国憲法は、この5月3日で施行74年目を迎えました。前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのない」ようにと決意して9条を定めたこの憲法を敵視し、改憲策動を続けてきた安倍晋三政権は、昨年退陣しましたが、後を継いだ菅義偉政権も憲法破壊の政治を一層進めようとしています。
バイデン米政権発足後初となる4月16日の日米首脳会談での共同声明は、日米同盟を「インド太平洋地域、そして世界全体の平和と安全の礎」であるとし、両国の軍事同盟が広大な地域を対象とすると宣言しました。とりわけ重大なのは、声明が「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」して、台湾有事に際しての米軍の軍事行動に対し武力行使を含めた日本の加担を約束したことです。声明は中国との軍事対決を念頭に、日本の防衛力の増強、辺野古や馬毛島での基地建設の推進をも盛り込んでいます。日米軍事同盟強化と憲法9条破壊は新たな段階に入りました。
声明は、こうした軍事同盟の強化を、中国による東シナ海や南シナ海での覇権的行動の抑止を理由にしています。しかし、これに、日米軍事同盟の強化で対抗することは、米中の軍事的緊張を高め、日本を巻き込んだ戦争の危険を呼び込むものです。憲法9条の精神のもと、国際法に基づく道理を尽くした平和的な外交交渉で問題打開の道を拓くべきです。
今まさに、日本国憲法の価値を再認識すべき時です。全世界の人々がコロナ禍で苦しむ中、軍備の拡大や戦争に明け暮れていることは許されません。憲法前文の「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」との理念は、コロナ禍に苛まれる人々の命とくらしを守る政治を実現する上で大切な柱です。
九条の会も加わる「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」の運動や市民と野党の共同した取り組みは、安倍前首相率いる9条改憲を阻止してきました。2019年の参院選では改憲派による3分の2の議席の獲得を許さず、2018年に自民党改憲推進本部が作成した改憲案の国会での提示や議論も押しとどめ、安倍政権を退陣に追い込みました。憲法施行後間もなくから始まった明文改憲の企てを、2度と侵略と暗黒の政治を許さないとの固い決意のもとに、国民は74年にわたって阻止し続けています。
ところが、菅政権は、一方で改憲案の国会での審議をすすめながら、「敵基地攻撃能力」の保有、日米共同声明により、憲法破壊を実質的に押し進めています。 今こそ、改めて、市民が声を上げるときです。菅改憲N O!の声を、地域草の根から、あげましょう。コロナ禍の中、工夫を凝らしてさまざまに行動を広げ、改憲発議阻止の署名を集めましょう。野党共闘が成果を上げています。市民の力で、来る総選挙では改憲反対勢力を大きくし改憲を断念に追い込みましょう。